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2023/12/12 不動産ニュース
2つの活用案が浮上、3月に最終決定の見込み
1935年の開場以来、東京都民の台所として稼働していた築地市場。
広さは約23ヘクタールと東京ドーム5つ分に相当し、都内にある11の中央卸売市場の中で最大の水産物の取扱量を誇った。
しかし、施設の老朽化を主な理由として、築地市場は2018年に豊洲へと移転。83年の歴史に幕を下ろした。
気になるのは、広大な跡地が今後どのように活用されるのか、という点だ。
東京都は、市場跡地の再開発を「築地地区まちづくり事業」とし、大規模な集客施設の整備といった条件を設けて再開発を行う事業者を募集。今年8月に事業者からの提案期限を迎えた。
行政からの正式な発表はないものの、2つの活用案が協議の対象になっているという報道があった。この記事では、築地市場の移転背景や跡地の再開発をめぐる行政の方針などについて解説する。
築地市場が豊洲へ移転した最大の理由は、施設の老朽化だ。
築地市場が開場したのは1935年のこと。関東大震災で焼失した日本橋の魚市場が移転したのが始まりだ。
築地市場の建物は戦前にできたこともあり、耐震性能が不安視されていた。市場にあった施設の中には耐震強度に問題を抱えたものがあり、首都直下地震に耐えられないリスクがあった。
築地市場には、観光客を含め多くの人が出入りしていたため、もし大地震が発生すると、被害が拡大すると懸念されていた。
都は当初、築地で再整備を行うつもりだった。しかし、工事中でも営業を続けられる用地の確保や費用の関係で難しいと判断され、豊洲へ移転する運びとなったという。
また、開場時とは輸送環境が異なってきたことも移転の理由の1つ。
1935年当時の輸送手段は、船や鉄道だった。築地市場は隅田川に面しており、市場に備えられた岸壁に船が横付けして、荷の積み下ろしができた。
鉄道での輸送は1986年まで行われていた。築地市場が独特な扇型だったのは、長い列車を停車できるよう設計されたためだ。
しかしその後、国内の輸送方法はトラックが主流となり、築地市場の構造が対応できなくなってきた。荷物の積み下ろし・積み込みを売場から離れた場所でせざるを得ず、不便さがあった。
そのほか、衛生面への指摘もあった。築地市場の構造は外壁がない「開放型」であり、外気にさらされていた。生鮮食品を扱うにあたり、適切な環境なのかに疑問を呈する声があったという。
豊洲への移転後、築地市場は整地された状態にある。
広大な跡地はどのように使われるのだろうか。都および中央区がそれぞれ発表している再開発についての資料から、一部内容を紹介する。
中央区は2021年10月、「中央区築地まちづくりの考え方」を発表した。主な内容は、築地市場跡地が持つ交通利便性を生かした土地の活用案だ。
築地市場は、東京湾岸エリアと都心とを結ぶ交通の要となる場所であり、水路・空路・陸路の交通結節点としての役割が期待されている。
陸路については首都高や東京メトロの地下鉄駅に加えて、東京駅から有明までをつなぐ新地下鉄などが構想の中心だ。
水路については隅田川や東京湾を航行する水上バスなど、空路については新たな建物の上にヘリポートを作る案が挙がっている。
そのほか、築地場外市場が持つ「食」、聖路加国際病院や国立がん研究センターなどが持つ「医療」、朝日新聞の東京本社が持つ「情報発信機能」、新橋演舞場が持つ「文化的な要素」など、さまざまな「特色ある地域資源」がつながる街という将来像を示した。
一方、東京都の都市整備局は2022年3月に「築地地区まちづくり事業」事業実施方針を発表した。
資料の内容は市場跡地の再開発を行う事業者向けで、事業の方針や規制内容などが記載されている。
再開発の対象となっているのは約19ヘクタールで、現在は都有地となっている。都は事業者を選定後、一般定期借地権により事業者に約70年間貸し付ける予定だ。
事業のコンセプトは「水と緑に囲まれ、世界中から多様な人々を出迎え、交流により、新しい文化を創造・発信する拠点」。キーワードでまとめるならば「自然・交流・文化」といったところだろうか。
東京都が事業者に求める主な方針として、以下のような項目が挙がっている。
・水上から訪れる人々を出迎えるシンボリックで印象的なアイコンとなるデザイン
・舟運、バス、地下鉄などのインフラから成る広域交通結節点を形成
・隅田川や築地川などの水辺を生かした歩行者ネットワークを形成
・浜離宮恩賜庭園や隅田川などの地域資源、食文化など歴史的、文化的ストックを生かし、築地ならではの新たなにぎわい交流・魅力を創造し、新たな文化を発信する機能を導入
・「大規模集客・交流機能」や「国際的な交流拠点にふさわしい会議や催し等ができる機能」を核として、導入する機能相互が連携、融合し、相乗効果を発揮
・CO2排出実質ゼロを実現、将来にわたり、最先端のデジタルの力を最大限活用 など
交通結節点を作るという点については、中央区も都市整備局も考えが一致している。
一方、文化の発信拠点については、中央区は新橋演舞場のような既存施設の活用を考えているが、都市整備局は新しいものを作ることを想定しているようにも読み取れる。
築地市場の跡地をどうするかについて、まだ行政からの正式な発表はない。
ただ、NHKなどの報道によると「2つの再開発内容が検討されている」という。
1つ目の提案内容は、各種プロスポーツの試合会場となるような、約5万人を収容する多機能型の屋内施設をはじめ、国際会議の開催も想定したカンファレンスホールを整備するとしている。
築地場外市場や豊洲市場と連携し、食文化を発信する施設の設置も想定しているという。
2つ目の提案内容は、アニメ・ゲーム・マンガなどに特化した、約2万8000人を収容できるエンターテインメント施設、多目的ホールやホテルなどを整備するというものだ。
いずれの提案も、東京都都市整備局が提示している「大規模集客・交流機能の導入」の実現に沿った内容となっている。この先、築地市場跡地はどのような変貌を遂げるのだろうか?
今後、各事業者から集まった提案内容は審査され、正式な事業者は2024年3月ごろに決定する見込みだ。築地市場跡地の再開発がどう進んでいくか、動向に注目したい。
参考元:【「築地市場跡地」にドームができる? 19ヘクタールの土地の活用案、来年3月に決定か |楽待不動産投資新聞 (rakumachi.jp)】
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